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東京地方裁判所 昭和53年(手ワ)3281号 判決

原告 大日本土木株式会社

右代表者代表取締役 安田梅吉

右原告代理人弁護士 小坂重吉

同弁護士 山崎克之

同弁護士 高谷進

同弁護士 萩原融

被告 石本重資

右訴訟代理人弁護士 田中繁男

主文

一  被告は、原告に対し、

1  金六一万二〇〇〇円および内金五四万円に対する昭和五三年一一月五日以降完済に至るまで年六分の割合による金員の支払をせよ。

2  昭和五三年一二月三一日、昭和五四年一月三一日、同年二月二八日、同年三月三一日、同年四月三〇日にそれぞれ金三万六〇〇〇円の支払をせよ。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  この判決は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

主文一、二項と同旨の判決ならびに仮執行の宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、別紙手形目録のような手形要件が記載され裏書の形式的連続のある約束手形二二通(以下、本件各手形という。)を所持している。

2  被告は、本件各手形を振り出した。

3  原告は、本件(一)ないし(十五)の各手形を各支払呈示期間内に支払のため支払場所に呈示したが被告から支払を拒絶された。

従って原告は、本件(十八)ないし(二十二)の各手形の満期到来後被告に対し同手形金の支払を求めても直ちに支払を受けることが期待できないので、同手形金の支払を予め請求しておく必要がある。

4  よって本件各手形の所持人である原告は、振出人である被告に対し、本件(一)ないし(十七)の各手形の手形金の合計六一万二〇〇〇円および内本件(一)ないし(十五)の各手形の手形金合計五四万円に対する訴状送達の翌日である昭和五三年一一月五日以降完済に至るまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金と本件(十八)ないし(二十二)の各手形の満期の日に各手形金三万六〇〇〇円の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因事実はすべて認める。

三  抗弁

被告は、本件各手形に印刷されている指図文句を抹消のうえ本件各手形を株式会社エヌ・エス・エイに対し振り出した。よって本件各手形は指図禁止手形であり、原告は本件各手形上の権利を取得していない。

四  抗弁に対する認否

認める。但し、本件各手形が指図禁止手形であるとの主張は争う。

第三証拠関係《省略》

理由

一  請求原因事実はすべて当事者間に争いがない。

二  抗弁記載の事実は当事者間に争いがないが、約束手形は指図文句の記載がなくても当然に指図証券性を有し裏書によって譲渡することが可能であること、および約束手形を指図禁止手形として振り出すには手形上に「指図禁止」又はこれと同一の意義を有する文言を記載する必要があることに鑑みると、右のように単に振出人が印刷されている指図文句を抹消しただけでは約束手形の指図性が奪われるものではないと解するのが相当である。

よって被告の抗弁は主張自体失当である。

三  本件訴状が昭和五三年一一月四日被告に送達されたことは記録上明らかである。

四  以上の事実によると原告の本訴請求はすべて理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 石田敏明)

〈以下省略〉

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